2007年05月27日

J-P・サルトル 「嘔吐」

ジャン=ポール・サルトル (Jean-Paul Sartre)

「嘔吐」(La Nausée)  白井浩司 訳 
            1994改訳新装版 人文書院
     
   
実は僕が役者を始めた頃 人知れず夢中になって読んでいた本に「アルトナの幽閉者」というサルトルの戯曲があり、最近ふと思い出して小説も読んでみたくなり「嘔吐」(あとがきから察すると、はきけ と読むと思う・・)を読みました。

この方は哲学者でもあり「実存主義」的な思想を唱えているというのですが、この言葉の響き、なにやら難しい感じがしてきますね〜

僕は哲学や思想といったことに あまり詳しくはありませんが、こういった本は 読み方によって様々な解釈があり、逆に手引書を読んでしまうと決まった考え方(その手引書なりの答えが)インプットされてしまうので、素直に小説として僕は読むことにしています。

実際一週間ぐらい、言葉は易しいのですが 流れがつかめず60ページほどしか読めなかったのですが、この「読み方」が間違っていました・・この本は全部を続けて読まないと繋がってこない事に気付き 一気に最後まで読むと、いままで僕の中で曖昧にして 考えようとしてこなかった問題が一気に噴出してきて、それまで引っかかっていた一つ一つの言葉が後から後から追いかけてくるように蘇えってきました。こんな感覚になった小説は いままでありませんでした。

おそらくこれを読んだ人たちは、それまでの培ってきた人生経験や生活環境によって様々なとらえかたをするのではないかと思います。実際僕もこれを二十歳前後に読んだらまったく違った理解をしていただろうし、今後十年、二十年後に読んでも全くちがう理解をするだろうと思います。


主人公「アントワーヌ・ロカンタン」は十八世紀に活躍した「ド・ロルボン公爵」についての史的研究の本を書く為にブーヴィルに滞在していた・・

毎日足を運んでいた現地の図書館で、ある独学者と知り合う。

土曜日の午後。ブーヴィル美術館での肖像画群での考えか、それまでの積み重ねてきた妄想からか「事物」「実存」に対しての妄想が増大し、ついに「ド・ロルボン氏」についての研究自体も中止する結論にまで達してしまった・・・


実際あらすじに しにくい作品です。
「事物」「実存」に関しては難しそうですが、読んでいただければ かなり納得できる翻訳です。

その後の独学者との口論もすごかった・・

とにかく初見だけではだめですね・・何度も読み返して行こうと思いますが、とりあえず現時点での感想です。

文章だけを見ると「ロカンタン」は物に対して「吐気」をもよおしているように感じますが、彼は「事物」「実存」や何もかもが「吐気」の対象で、その感覚・妄想が 木の根のように脳から体の全体まで張り巡らしていて、それを取り除こうとしてもどうにもならず、それを消す為に「ド・ロルボン」の研究をしていたけれども結局 彼を実存させる為に自分があり、自分を実存させる為に「ド・ロルボン」がある事がわかり結果 彼も妄想を消す材料にはなり得なかった事が研究中止に至った のではないかと僕は感じましたが・・難しい・・

特にブーヴィル美術館で、彼の絵に対する印象を表した「心の中」の言葉が非常にリアルで、読んでいる僕自身の考えが そうであるかのような感覚にさえなってきました。
また途中から入ってきた 紳士と婦人の言葉も非常に重みを感じました。

そしてついに自分の事を唯一理解してくれていた元彼女「アニー」との再会。ロカンタンの妄想を排除してくれる最後のチャンスだったかもしれなかったのに彼女は別の男と去ってしまう・・
アニーは舞台「ブリタニキュス」(作:ジャン・ラシーヌ)での失敗から女優を諦め、自分の原点に立ち返るために彼と話をしたかったようにも思いました。

最後の「独学者」の起こした事件ですが、犯罪はロカンタンにとって特別な事ではなく、誰にでも起こりうる出来事に感じ、受け入れたのでしょうか・・

随所々にサブリミナル効果のようにキーワードが隠されていて、後になって気付いた事が沢山ありました。

中には多くの 心に残るような名言があり、今後も読み返して記憶にとどめておきたいと思います。


現在の環境問題と繋がってものすごく気になった文章に・・

「もしもなにかが起こったならば。もしも急に自然がぴくぴくと動きだしたならば。そのとき奴らは自然がそこにいることに気がつくだろう。心臓が破れそうに思われるだろう。そのとき、堤防とか、城塞とか、発電所とか、溶鉱炉とか、ドロップハンマーとかがなんの役に立つだろうか。それはいつでも、いますぐにでも起こりかねない。前兆がそこにあるから。」
(本文より引用)

※あくまでも素人感想ですのであしからず。


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