2007年06月03日

J-P・サルトル 「蝿」

ジャン=ポール・サルトル (Jean-Paul Sartre)

「蝿」(Les Mouches)  加藤道夫 訳 

     サルトル全集8 劇作集 「恭しき娼婦」 人文書院
     
   
以前舞台で「オレステイア」のオレステスを演じさせていただいた時、どの文献か覚えていないのですが、この作品の事が触れてあり、存在を知りながら今回初めて読みました。

アイスキュロスの「オレステイア三部作」の二つ目 「供養する女たち」のサルトル版ですが、オレスト(オレステス)が罪を犯してからが 原作と かなり流れが変わり、サルトル独自の展開に進みます。

題名に惑わされましたが、「蝿」は「エリニュス」の事だったとは驚きました。

やはり前回の「嘔吐」にもつながる思想的な面が強く感じられましたが、ギリシア悲劇のテイストそのままに表現されていました。

ギリシア神話は、神が絶対的な立場でありながら、気まぐれで、苦悩もする人間的な面もあり、神の世界と人間の世界がとても近い存在で、神に対して親近感を覚えさせる所が僕はとても面白いんです。

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オレストは教僕と一緒に故郷「アルゴス」へ帰った。そこでジュピテル(ゼウス)に出会い、母クリテムネストルがエジスト(アイギストス)と共謀して父アガメムノン王を暗殺したと言う事を知らされる。その後 姉エレクトル(エレクトラ)にフイレエブという偽名を名乗り彼女の厳しい近況を聞き、直後に母とも逢ってしまう。

舞台は移り、エレクトルの振る舞いに怒るエジスト。
またアトレウス家(アガメムノンの家系)への憎しみをエジストは語る・・

再びエレクトルの許へ現れたオレストは自分がフイレエブではなく、弟である事を告白。エジストと母の二人を殺害することを誓う・・・

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こういう感じの始まりですが、微妙に違えど確かに「オレステイア」です。コロス的な存在はジュピテルが担っている感じです。

「オレステイア」は「ハムレット」にかなり近い雰囲気の話ですが、オレステスはハムレットのように狂気を演じたり、間接的にじわじわと 王と王妃を追い詰めるといったことはせず、かなり直接的な行動をとっていくタイプです。

僕は舞台の時からオレスト(オレステス)の真直ぐで純粋な性格が気に入っていて、この作品はさらに強調されていて嬉しかったです。自ら進んで他人の悔恨のすべてを引き受けて「後悔の盗人」という名前を受け入れようなんてすごい事を言う人です。とても懐かしくて読んでる間中 鳥肌が立っていました・・いつかまた挑戦してみたいと思っているから・・


この話はオレステイアに比べて エジストに後悔の念を抱かせるような くだりも多くあり、救いがあります。実際彼は、アトレウス家に対して 親の代より恨みの念をもっていて、アトレウス家自体も先祖のタンタロスからの残忍な悪事が代々続いていて、恨まれても仕方が無い程の家系でしたから。

後半に入ってエジストとジュピテルの会話がまさにサルトルの思いが感じられました。特に自由についての論議が展開されている所が印象的で、「人間の魂の中で一度でも自由が爆発してしまったら、もう神々はその男に対して何をすることもできないのだ。」というセリフが今でも頭から離れません・・・ここから さらに飛躍して考えてしまうと、今の管理社会は 人間が そのほうが都合がいいから作ったもので、実際は自分が実は何をしても自由だった”という考えが大多数の人々に起こったとき きっと恐ろしい事になるだろうと思う・・・まあ事実管理されているのは人間と一部の生き物などで、野生の動植物、鳥類、魚類などには 縄張りはあっても 広義の国境や税金は無いですから、考え方次第では常に恐ろしい結末も用意されているわけです・・・合理化がさらに進んで仕事にあぶれる人々が増え、それをまかなえるだけの新産業が発見できず、やりがいのある仕事を” などと考える余裕が無くなった時、現在の地位を維持する為に世襲社会が後ろから追い討ちをかけてきて とどめを刺そうとしたとき、もともと代々受け継がれてきた地位の無い人々は食うに食われず追い詰められて、こういう考えを起こす時代がやってくるかもしれません・・なんて僕は破滅思考ではありませんが。


この作品のラストは非常に劇的で背筋がゾクっとする終わり方です。ぜひ読んでみてこの感覚を味わっていただきたいですね。


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