2007年04月28日

木々高太郎 「就眠儀式」

幻の探偵雑誌 1「ぷろふいる」傑作選 (ミステリー文学資料館・編)

第十一回

「就眠儀式」 作:木々高太郎


今回がこの本の最終話です。

なんとこの方は第四回の直木賞作家だそうです。
第一回の「甲賀三郎」氏と探偵小説芸術論で論争があったそうで、最初と最後に載せるとは心憎い演出ですね〜

「就眠儀式」と言うのは、ひどい不眠症に悩まされている神経症の患者さんが、寝る前に気になってしまう(例えば時計の音など)事を整理して 安眠できるようにする行為(儀式)だそうです。

現代の小説の感じに非常に近い文章なので、読みやすかったです。

内容です。「立田」という大学生が、不眠症患者の相談に「大心地」という医大の先生の所へ相談に行く。その患者をめぐって医大の先生が、病気と事件の両面から推理をしていくと言う話です。

僕は当然、医学については全くの素人ですが、医者としての見解が、かなり「リアル」な感じがしていました。
そこで著者の詳細を見てみると当然で、慶応大学医学部出身、この作品を書いた11年後には教授だったそうです。また医学部在学中から小説を発表していたそうです。

非常に面白かったので、「人生の阿呆」(第四回 直木賞)も読んでみたくなりました。

※補足
僕が知らなかったのはお恥ずかしい限りです。
かなり有名な方でした・・・調べてみるとものすごい方でした。「推理小説」という名前の生みの親でもある方で、その他数々の偉業があります。
そして僕の身近な所にもありました。そう、僕の食べた覚えのあるあの「頭脳パン」の生みの親でもあるそうです。

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2007年04月27日

小栗虫太郎 「絶景万国博覧会」

幻の探偵雑誌 1「ぷろふいる」傑作選 (ミステリー文学資料館・編)

第十回

「絶景万国博覧会」 作:小栗虫太郎 


明治四十一年三月三日。「尾彦楼」(おひころう)という寮に、歳は十五になる「光子」と、その家庭教師で三十前後の「工阪杉江」、そして歳も九十二近く その昔、源氏名を濃紫と言う名を持った元 太夫「お筆」の三人が住んでいた。

雛祭りの雛壇には、その昔「お筆」をめぐり争った客達の品が各人形に添えられてあったが、その一つの内裏雛が、一本の卍字鎌の形をした頭飾りになっている長笄(ながこうがい)を抱きかかえているのに杉江は非常に気にかかかった。そこで、お筆に聞いてみると・・

とかいつまんで書くとこんな始まりで、その後は「釘抜」(くぎぬき)という大きな矢車のような物をつかった折檻の話が始まり・・・最後は観覧車のトリックが目玉の話です。



小栗虫太郎は、以前「後光殺人事件」で朗読しています。

こちらの話は「法水麟太朗」シリーズの第一弾で、
普賢山劫楽寺で起こった殺人事件をめぐって、法水麟太朗を中心に、シリーズレギュラーの「支倉検事」、捜査局長「熊城卓吉」と事件の真相を探る話です。
登場人物も非常に多いです。

この機会に、ぜひ小栗虫太郎ワールドにひたってみるのも良いのではないでしょうか。

   朗読「後光殺人事件」

http://www.voiceblog.jp/kiyo22/car4.html?il=20&io=20

※ブログ形式になっていますので、下から聞いていってくださいね。
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2007年04月26日

酒井嘉七 「両面鏡牡丹」

幻の探偵雑誌 1「ぷろふいる」傑作選 (ミステリー文学資料館・編)

第九回

「両面鏡牡丹」(ふたおもてくらべぼたん) 作:酒井嘉七 


この作品はジャンルでいうと純文学の部類に入るような読み心地でした。
あっというまに世界に引き込まれる感じです。

内容ですが、小唄と踊りの師匠をしている若い女性の話です。この話も以前の「陳情書」で書きました「ドッペルゲンガー(Doppelgänger)」が題材になっていますが、悲愴感漂う感じは無いので、安心して読める内容でした。

題材はともあれ、なんともいえないくらい独特の柔らかな雰囲気があって後味が良かったです。

本文中の「お母さんのお好きな金つばでも買ってあげましょう」なんてセリフで、
つい " 金つば ”食べたくなりました・・

「陳情書」と読み比べてみると、双方味わいがあっていいと思います。

青空文庫 「陳情書」 作:西尾正

青空文庫 「両面鏡牡丹」 作:酒井嘉七
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2007年04月25日

大阪圭吉 「花束の虫」

幻の探偵雑誌 1「ぷろふいる」傑作選 (ミステリー文学資料館・編)

第八回

「花束の虫」 作:大阪圭吉


この作品は今までで一番 状況がイメージしやすく読みやすかったです。

まさに探偵小説といった雰囲気です。

「大月対次」という弁護士が探偵役で、彼を中心に 秘書の「秋田」(探偵物にはつきもののウッカリ役とでも言いましょうか・・)と共に事件を探る。

まず初めに「岸田直介」という資産家が、水色の服を着た男に梟山の断崖から突き落とされる所を「比露子」夫人が目撃したという証言から物語がはじまります。

その後、地元の目撃者が登場し、被害者がその時点で所持しているはずの無い物を見たと証言。事件の謎が深まる・・

そして「花束の虫」とは一体・・

と言った感じです。

なかなか斬新なトリックもあり、読みごたえのある作品でした。
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2007年04月24日

西嶋亮 「鉄も銅も鉛もない国」

幻の探偵雑誌 1「ぷろふいる」傑作選 (ミステリー文学資料館・編)

第七回

「鉄も銅も鉛もない国」 作:西嶋亮


この作品は今までとは違って、ギリシア悲劇に出てくるような場所 (時代はもっと近代的ですが)が舞台の架空の国の話です。

最初に王を喪服の人物が殺し、その男は自分の姿を見た王室医を殺害。
現場には鋸屑が残されていた。
その後、少佐に王殺害の濡れ衣を着せられた王妃は処刑された。民衆はその事実を知り、貴族階級が元凶と奮起し革命が起こる。そして民衆は、鉄や銅や鉛のある文明から決別した。
時が経ち、元蹄鉄場の職工 イノガの残した自叙伝の中で、彼が実は王殺害に関わっていたことが書かれていた・・・

実際これはあくまでも僕なりの解釈なのですが、直接的な文章がほとんどなく、全体的に比喩的な表現で語られているので、多分こうなんじゃないかなって思いました。
発表されたのは1936年。まさに日本は戦時中。文明からの決別を思い描いたのでしょうか・・(だとすれば当時の検閲を逃れる為にわざと直接的な文章を避けたのか・・)
最後の 像が立っている所なんかは、まるで映画「最後の猿の惑星」のラストシーンを思い出しました。

かなり壮大な物語のひとコマのような話なので、30ページ弱の話にはあまりにも短く、もっと長編でこの話を読んでみたかったです。
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2007年04月23日

西尾正 「陳情書」

幻の探偵雑誌 1「ぷろふいる」傑作選 (ミステリー文学資料館・編)

第六回

「陳情書」  作:西尾正


本文より引用
There are more things in heaven and earth,
Horatius, Than are dreamt of in your philosophy.
(Shakspeare, Hamlet.)
ハムレット「―この天地の間にはな、所謂
     哲学の思いも及ばぬ大事があるわい。…」(シェクスピア)


ハムレットが亡き父の亡霊にあった後のホレイショーに向かって言ったセリフの引用と思われますが、この言葉からこの話が始まっています。(話の内容から言ってハムレットとはあまり関係ない意味で使われています・・)

最初はこれにびっくりして読み進んでいましたが、この冒頭部分以外は手紙の文章のみでした。
そしてなんと「ドッペルゲンガー(Doppelgänger)」の話だった事にも驚きましたね〜
この話は青空文庫にもありますよ。

ちなみに解説によると、 この作品は当時「発禁処分」になったそうです。

青空文庫 「陳情書」
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2007年04月22日

蒼井雄 「狂燥曲殺人事件」

幻の探偵雑誌 1「ぷろふいる」傑作選 (ミステリー文学資料館・編)

第五回

「狂燥曲殺人事件」  作:蒼井雄


今までこの本を読んできた中で、まさにこの話が想像していた推理小説(探偵小説)に近かったので、待ちに待った感がありました。
今までは人物をかなり掘り下げた形の話だったので重い感じでしたが、今回は、犯人は誰だ!って推理しながら読み進んでいく事が出来ました。

そして、まさに話のテーマである「狂燥曲」のトリックを実際に映像で見てみたいですね〜
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2007年04月21日

海野十三 「不思議なる空間断層」

幻の探偵雑誌 1「ぷろふいる」傑作選 (ミステリー文学資料館・編)

第四回

「不思議なる空間断層」 作:海野十三

かなりプロットが凝っていて、どうなっているのか考えているうちに、あっという間に読み終わってしまいました。

夢から殺人事件にまで発展してしまうストーリーなのですが、(といっても「エルム街の悪夢」とはぜんぜん違いますよ。)とにかく時代を感じさせない作品でした。

ところで「乃公」って漢字が「おれ」と読むのが慣れなくて、その度に「んっ?」ってなってしまいました。
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2007年04月20日

夢野久作 「木魂」

幻の探偵雑誌 1「ぷろふいる」傑作選 (ミステリー文学資料館・編)

第三回

「木魂」(すだま) 作:夢野久作


「夢野久作」の作品はタイトルが怖いので あまり手をつけなかったのですが、読んでみるととても感動的な作品だったので、他の作品も読んでみたくなりました。

最初は映画の「ビューティフル・マインド」を思い起こさせましたが、全くそんな事はなく、また思いつめた男が自暴自棄になって何か犯罪でも犯すのかとおもって読み進んでいましたが、この男の悲惨な過去にとても胸が苦しくなりました。

そして結末がなんとも悲しく、37ページ程しかありませんが、つい涙してしまいました・・
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2007年04月19日

角田喜久雄 「蛇男」

幻の探偵雑誌 1「ぷろふいる」傑作選 (ミステリー文学資料館・編)

第二回

「蛇男」 作:角田喜久雄


これはかなり怖い話でした・・

まさに猟奇物です。

市街地では隣近所との付き合いがめったに無いという事の恐ろしさをリアルに描いています。

作品的には時代を全く感じさせないので、
映像で怪談ショートドラマをやってもよさそうな感じです。

とにかく心理描写が、まさにその場にいるような怖さを感じさせます。

途中、行と行の間に"×"という時間経過か何かを示す印が六ヶ所入っているのですが、その"×"が話の展開をやたら早めてしまったので、僕の想像力を超えてしまいました・・この間に何があったんだろうって、いまだに気になってます・・

ちょっとヒッチコックの「裏窓」を思い起こさせる作品でした。
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2007年04月18日

幻の探偵雑誌1「ぷろふいる」傑作選

最近朗読を始めた事で、本を読む機会が以前より増え、また朗読サイトのアンケートの方でも推理小説の数が多いので、古い推理小説を読むようになりました。

僕は「江戸川乱歩」「横溝正史」以外あまり昭和初期前後の推理小説(当時は探偵小説と言ったようです。)は知らなかったのですが、調べてみるとかなり沢山あって絞りにくいですね〜

そこでオムニバス的な本を探していたら「幻の探偵雑誌」(ミステリー文学資料館・編)というシリーズを発見しました。

「ミステリー文学資料館」って?!
実は巻末に書いてあって、池袋の「光文社」ビルの中に一般開放された資料館があるそうです。(入館料300円)
近いうちに行こうと思っているので、その時は必ず感想書きますね!

光文シエラザード文化財団「ミステリー文学資料館」

その第一巻が「ぷろふいる」傑作選という本です。
「ぷろふいる」という雑誌は昭和八年〜昭和十二年までの月刊誌で、かなり有名な雑誌のようです。当時の雑誌の写真が最初に載っています。当時の定価二十銭って書いてあります。内容は、異なる作者で11作品あります。

ところで今回から、内容はネタがわかってしまうのであまり書けませんが、かいつまんで感想などを書いてみようかなって思います。

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幻の探偵雑誌1「ぷろふいる」傑作選

第一回

「血液型殺人事件」作:甲賀三郎

この作品なかなか面白い作品でした!
今では技術も一般的な知識も進歩しているので、現在の常識と比べて冷めて読んでしまってはどうにもなりませんが、僕はかなりのめりこんでしまいました。
特に人間関係がとてもよく書かれていて、とても同情してしまう場面もあり、タイトルから受ける雰囲気とはかなり違いました。
ラストは物悲しい感じでしばらく忘れられないですね・・
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という訳で今回から度々この時代の「探偵小説」について書いていこうと思います。
また、これから紹介する作品の中で朗読するタイトルも当然出てきます。